サファリの手帖 |
マサイ族 ナイル・サハラ語族 東ナイロート語派 マー言語属 ケニア/タンザニア両国の国境沿いに広く分布する遊牧系牧畜民で、元来、家畜の牛を富の象徴と考える人々。 <地球上のすべての牛はマサイ族に属す。他部族の手にある牛は一時的に預けてあるだけ>という、家畜強奪を正当化するような伝承もある。 しかし、野生生物の生息域で放牧と遊牧を織り交ぜる牧畜生活をしてきたマサイ族は<生まれながらのナチュラリスト>と言える。 ケニアのマサイマラ、アンボセリ。タンザニアのセレンゲティー、ンゴロンゴロといった、現存の優れた野生生物保護区がマサイ生活域にあるのはこれと無縁ではない。 マサイ族には<土地は神の管轄下にあり、必要とする者は誰でも利用できる>とする認識があり<土地所有>という概念が近年まで存在しなかった。 野生生物が土地を利用する権利も同等に認める彼らが守ってきた土地であるからこそ、前述のような保護区が今日まで残ってきたと言えるだろう。 そういうマサイの民だが、近年は政府の推進する定住政策や彼ら自身の学校教育の必要性への認識などが相まって、生活形態も価値観も大きく変貌しつつある。 右の写真は、8年間の戦士時代をすごした後、成人式に備えて盛装したモラン(戦士)の雄姿。 撮影時の成人式では約3千人のモランが一挙に成人したが、写真のモランは英語もスワヒリ語も話さない生粋のマサイで、地域別グループの一つ約千人のモランを束ねる<千人隊長>であった。 立場にふさわしい"面魂"の持ち主であると思う。 |